Social ImpactJaponic Coffee Farm 阿蘇が目指すソーシャルインパクト
1.障害者・ひきこもり者等「生きづらさ」を抱えた人たちの雇用創出
Japonic Coffee Farm 阿蘇の代表である佐藤が経営するフロンティアリンク株式会社は、厚生労働省指定「就労移行支援事業所」フロンティアリンク キャリアセンターを全国で運営し、精神・発達等の障害をお持ちの方がプログラミング等のITスキルを習得して一般企業に就職するためのサポートを行っています。また、同じく佐藤が代表を務める日本初のひきこもり者主体の事業会社である株式会社ウチらめっちゃ細かいんで(めちゃコマ)は、30名ほどのひきこもり当事者・経験者が完全在宅でホームページ制作やプログラミング講座の講師などのIT関連業務を行っています。
「IT以外の就労の選択肢を作りたい」。障害者・ひきこもり者等の「生きづらさ」を抱えた人たちの教育・就労支援をITを通じて行う中で、佐藤が常に感じていたことです。障害をお持ちの方やひきこもりの方の中には、ITに向いている人や得意な人が一定数いるのは事実ですが、すべての方がITが好きなわけではありませんし、仕事に繋がるわけでもありません。一方で、土に触れることで体調・メンタル面が整ったり、作業を通じて体力づくりができるなど、農業にはITにはないメリットも多くあります。
自然栽培による農業であれば収穫等の繁忙期だけでなく、日々の雑草取りや虫対策など、年間を通した作業が見込めます。また、国産コーヒーはそもそもが希少なため、従来品でも100gで5,000円~10,000円といった高価格帯での販売が行われています。結果として、障害者やひきこもり者等にお支払いする工賃も高めに設定できます。さらに、将来的にはカフェを併設することで、農作業以外の接客や清掃といった業務も生まれますし、ITスキル習得支援と組み合わせることで、ホームページの管理やSNSでの情報発信等も担当することが可能になります。
「就労の選択肢は多ければ多いほどよい」。Japonic Coffee Farm 阿蘇は、農福連携の新しいモデルの一つになることを目指しています。
2.自然栽培とスマートハウスによる「新しい農業モデル」の創出
農業とは「命の源」ですが、日本における農業従事者は年々減っており、高齢化の進展も著しいです。世界情勢が混沌とし食料価格が上昇する中で、「食料安全保障」の重要性は今後ますます高まります。木村秋則先生が提唱する自然栽培は、「土の力」を最大限に生かすことを特徴としていますが、農薬・肥料・除草剤を使用しないことから、単に安全・安心なだけでなく、資材コストを引き下げられるメリットもあり、さらに誰もが取り組みやすいという利点もあります。
「いざ」という時に、自分が口にするものを自分で作れる技術があることは、自らを守る手段になります。農業従事者の減少とともに増える耕作放棄地を活用し、「半農半X」で平日はこれまで通り仕事をしながら、週末は自分や周りの人が食べる食材を育てるような生活も、自然栽培であれば決して夢物語ではありません。そして、自然栽培に興味を持ち、農業を始める方が少しずつ増えて行けば、本格的に農業を行いたいという方も出てきますし、後継者の不在や耕作放棄地・空きビニールハウス等に頭を悩ませている農家の方にとってもメリットのある話になります。
特に、空きビニールハウスについては、地球温暖化の影響もあり、バナナやマンゴーなどの熱帯系作物のビニールハウス栽培が今後国内でさらに広がると考えられます。国産で自然栽培の熱帯系作物は希少価値が高いですから、農家の方にとっても新たな収入源になる可能性があります。Japonic Coffee Farm 阿蘇は、日本で初めての自然栽培コーヒー園、かつIoT等のテクノロジーを活用した「スマートハウス」による農業実践の場として、自然栽培の普及啓蒙や、スマートハウスによる高付加価値・高収入農業のモデルとなることを目指します。
3.阿蘇・熊本の活性化や、将来的な他地域展開による地方創生への貢献
「火の国」熊本は、阿蘇や天草、熊本城などの観光名所や、黒川をはじめとする温泉も数多くあり、海山の幸も豊富な「恵みの地」です。一方で、2016年4月の熊本地震の影響もあり、阿蘇地域の観光客数は未だ回復途上にあります。日本で初めての自然栽培コーヒー園という強みを生かし、コーヒーの収穫・焙煎体験や、将来的には阿蘇産のコーヒー豆のみを使用し、日本の名水百選にも選ばれた南阿蘇・白川水源の湧水で淹れた「100% Pure ASO」コーヒーのカフェでの提供、地元の温泉やレストラン等とのコラボレーションなどを通じて、Japonic Coffee Farm 阿蘇は、阿蘇・熊本地域に興味関心を持ち、現地に足を運ぶ方を増やすことに少しでも貢献したいと考えています。
一方で、Japonic Coffee Farm 阿蘇自体は、2022年5月に80本の苗木を600平米のビニールハウスで栽培するところからスタートしますが、将来的には1haで1,500本前後の栽培を行うことを目標にしています。自然栽培コーヒー園を中核に、カフェ及び障害をお持ちの方の就労支援施設を併設した事業パッケージを阿蘇で確立した後には、阿蘇と類似の自然条件、すなわち「火山のふもとで標高が高く、寒暖差が見込め、水が豊富にある」他地域での展開も計画しています。コーヒーツーリズムによる観光客の流入と、農福連携による障害者・ひきこもり者等の雇用創出、地域農業の活性化の3本柱で地方創生に貢献することが、Japonic Coffee Farm 阿蘇の目指す姿です。